建物への想い 窪田ビル邸
窪田ビル/京都市東山区
主体構造・鉄骨6階建

地域の意味を理解して進めるべき建築作業。

 今回の祇園富永町のビルはテナントビルでしたが、美観第2種地域ということもあって、この地域自体の意味を理解して計画を進めることがまず重要なポイントでした。これは私たちだけでなく、施工に携わる人たちにとっても重要なことでした。いかに理解して作業を進めていけるかどうかでその施工会社の力量 がはっきりとわかりますからね。大岩さんとは今回がはじめての仕事となりましたが、正直言って当初は期待と不安半々といったところでした。私たちの思いが、どういう形で表されてくるのかという点でね。なぜなら出来上がった建物には施工会社ちしての考え方というか、ポリシーがはっきりと表れてくるものですからね。
今回は込み入った場所でしたし、特に地下での以前の基礎の撤去がかなり難しい作業でした。両隣に影響が出ないようにするため、かなり技術的な検討をしました。おかげで工事が2ヶ月ほど延びてしまい、また外壁のパネルが複雑な形だったのでその仕上げもあわせて、大岩さんはだいぶん苦労されたようでしたね。でも、対応というか段取りはなかなかよかったと思います。

時代を読み、京都らしさを表現する。

 私たちの場合、京都でのビルやマンションの建築の仕事が多いんですが、今回も含めて建築設計を進めるにあたっては、まず施主さんの要望を引き出し、目的をつかんでいかに提案するかということが重要になります。そしてこれについては二つのポイントがあると考えています。一つは時代の流れの読み取り。 これは施主さんの意識及び、今の時代に何が求められているのかを常に知っておくということ。個々にいろいろな問題があっても、もっとも重要なのはこのことです。時代のトレンドに乗り遅れてはいけないし、かといって先走ってもいけないというようなね。そしてもう一つは京都らしさ。外観であったり、全体の環境であったりといった具合に、建物によっていろいろな仕掛けを施しています。これは京都で仕事をする私たちにしか味わえないおもしろさでもありますね。そういう意味では京都はおもしろいし、京都でやって行きたいと思っています。とにかく京都には力っていうか、深いものがありますし、そうしたものに少しでも関われるのはうれしいことだと思うんです。

地域に何かを提案できる建築活動を。

 施工者の方たちにしても、単に京都で建築をやっているなどという意識ではなく、地域に何かを提案しながら建築してゆく意識が必要だと思います。地域地域のトレンドを読みながら進めること、そうした作業がものづくりにきっと何かプラスアルファーを生むものなんですから。特に京都の場合は、景観の問題や近隣の問題、環境の問題など制約が多く、かなり意識した作業が必要ですからね。施工の段階で、景観を読みながら、地域の文化とうまくマッチングさせた建物をつくっていかなければならないはずなんです。私たちが今、施工者や職人さんに望むのは、このあたりのレベルまでぜひ意識してほしいということなんです。
もともと京都には伝統的に良い技術を持った職人さんが多かったのは事実です。ひとつの技術の柱を持つというか、仕事をすればすごいなあと言わせる職人さん。これも職人単位 の技術だといえなくはありませんが、その技術力を育て伝えていくという施工者のノウハウもとても貴重だと思いますね。ぜひこうしたところを大切にしていただきたいと思っています。 (砂地一廣氏談)

 


株式会社大晋設計
〔代表取締役:砂地一廣〕
昭和49年設立。
京都を中心に個人住宅、マンション、 店舗、テナントビルなどの 設計監理からインテリアプランニングまで活動分野は幅広い。