建物への想い 福本邸 大藪邸 小山園 亀甲屋
小山園/京都府宇治市
ショーウインド改装工事

店舗と住居。まったく別の空間を融合させる。

 福本邸(K-South)は、店舗と住居が一体になっているため、そのかねあいには計画段階からかなり心しました。例えば外観は店舗の顔でもありかなりインパクトのあるものにしなければならないし、ところが住居の部分はまったく別 の空間になるわけで、窓などの開放部分をどう合致させていくかといったようなことなど。全体的に見ればそれほど大きな制約もなく、当初イメージしていたものにほぼ近いものが出来上がったと思います。
この仕事では、私と施主さんの間にプロデューサーという存在があり、計画の段階がいくつか済んだ時点で入っていったわけです。その時点で、すでにテーマが出来上がっていましたから、それを忠実に形にしていく中で、いかに自分の個性を出すかという点では、かなり忍耐が必要でした。また、施主のジャッジがあるわけですから、ジャッジの基準も幾分違っていましたね。

建築も分業化時代。私の出番も広がって・・・。

 以前は店舗づくりといえば、建築家が計画・設計から内装デザインまで手がけていましたが、これはプロデューサーやディレクター、意匠デザイナーなどといった存在がなかったからで、現在はそれらの分業から成り立つようになっています。おかげで私ももともとは意匠デザインからこの世界に入ったわけですが、福本邸のように仕事の幅が広がってきています。とにかくこうした分業から成り立つ作業の場合、互いの信頼関係の構築が成功の鍵だと思います。

福本邸
(K-SOUTH)
京都市伏見区
主体構造
鉄骨3階建

建物づくりは洋服づくりのようなもの。

 私の場合、作品という形でのものづくりはしていません。まあ、施主さんの服をつくるような感じですね。その方に似合うものをつくるわけです。だから、最初から着れそうにないものを希望される場合は、「そんなの建てても似合わないから無駄 ですよ」とはっきり言いますし、だいたい似合わないものはつくりようがないですからね。
施工業者さんとの関係でも同じようなことがいえますね。図面通りにやって行って納まりきらないところが出てきても、私たちに相談せずに勝手に変更して納めてしまって終わってからこんなになりましたという具合にね。結局図面 に込めたこちらの思いを汲み取れるセンスやカンがあるかないかということなんですが、一般 的にはなかなか。その点大岩さんとはそういった問題はなかったですね。問題があると部分的なスケッチをファックスで送ってきて相談してくれましたから。
ようするに建物づくりは個人プレイじゃなく、共同作業なんだということです。

亀甲屋/京都市中京区  改装工事

良い仕事は、厚い信頼から生まれる。

 あと、大岩さんとの仕事で感じたのは段取りの良さというか、施工日程をスピーディにこなされたことですね。これは職人さんとの信頼の厚さゆえだと思いますね、だって、いくら現場監督が段取りをたてても職人さんが動いてくれなければできないものですからね。先程の納めの問題だって、作業を職人まかせにせず現場監理者がよく把握できていてこそできるものですから。だからこそ現場のキレイさも徹底できたのでしょうね。細かなことですが、こんなことが安心して作業をまかせられるポイントなんですよ。ともすれば忘れられがちな職人さんの良さといったらいいでしょうか。私にしても、大岩さんにしても、こうした信頼関係を大切にしていくことが良い仕事につながるのだということ常に心しておかねばならないとおもいますね。 (杉木源三氏談)

  
大藪邸  京都市西京区  主体構造: 木造2階建

杉木源三
すぎき げんぞう
〔株式会社スペース代表取締役〕
昭和26年京都生まれ。
武蔵美術大学建築学科卒業。
昭和59年スペースデザイン・バーン設立。
昭和62年株式会社スペースに改称。
店舗デザインから住宅設計まで幅広く活躍中。