店舗と住居。まったく別の空間を融合させる。 福本邸(K-South)は、店舗と住居が一体になっているため、そのかねあいには計画段階からかなり心しました。例えば外観は店舗の顔でもありかなりインパクトのあるものにしなければならないし、ところが住居の部分はまったく別
の空間になるわけで、窓などの開放部分をどう合致させていくかといったようなことなど。全体的に見ればそれほど大きな制約もなく、当初イメージしていたものにほぼ近いものが出来上がったと思います。 建築も分業化時代。私の出番も広がって・・・。 以前は店舗づくりといえば、建築家が計画・設計から内装デザインまで手がけていましたが、これはプロデューサーやディレクター、意匠デザイナーなどといった存在がなかったからで、現在はそれらの分業から成り立つようになっています。おかげで私ももともとは意匠デザインからこの世界に入ったわけですが、福本邸のように仕事の幅が広がってきています。とにかくこうした分業から成り立つ作業の場合、互いの信頼関係の構築が成功の鍵だと思います。
建物づくりは洋服づくりのようなもの。 私の場合、作品という形でのものづくりはしていません。まあ、施主さんの服をつくるような感じですね。その方に似合うものをつくるわけです。だから、最初から着れそうにないものを希望される場合は、「そんなの建てても似合わないから無駄
ですよ」とはっきり言いますし、だいたい似合わないものはつくりようがないですからね。
良い仕事は、厚い信頼から生まれる。 あと、大岩さんとの仕事で感じたのは段取りの良さというか、施工日程をスピーディにこなされたことですね。これは職人さんとの信頼の厚さゆえだと思いますね、だって、いくら現場監督が段取りをたてても職人さんが動いてくれなければできないものですからね。先程の納めの問題だって、作業を職人まかせにせず現場監理者がよく把握できていてこそできるものですから。だからこそ現場のキレイさも徹底できたのでしょうね。細かなことですが、こんなことが安心して作業をまかせられるポイントなんですよ。ともすれば忘れられがちな職人さんの良さといったらいいでしょうか。私にしても、大岩さんにしても、こうした信頼関係を大切にしていくことが良い仕事につながるのだということ常に心しておかねばならないとおもいますね。 (杉木源三氏談)
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杉木源三 |